降っても晴れても

日々の想いと徒然草

    Love momo
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 高校時代の友人Kから電話があった。
 Kとは話すのはかれこれ7、8年ぶりである。
 同窓会を開くので、出席してくれないかと言う要件だった。
 
 「ところでさ、Yを覚えてるか?」Kが言った。
 「ああ、そう言えばいたな」と、私。
 
 私は高校時代にロックバンドを組んでいたんだけど、
 Yは別のバンドでリードギターを弾いていた男だ。
 彼の腕前はすごくて、私らの間では評判になっていた。
 
 「で、Yなんだけどさ、末期ガンなんだよ」
 「えっ!?……」私は思わず言葉を失った。
 
 「オレ、この前、見舞いに行ったんだけど、
 すごくやつれててさ、いたたまれなかったよ」
 「そうか」
 「お前も機会があったら、一度見舞ってやれよ。
 あいつ、昔の友達に会いたがってるらしいから」
 「ああ、そうするよ」
 
 私は電話を切ったあと、ため息をついた。
 ガンが現実となる年齢なったんだ。
 私は口にくわえていた煙草を箱に戻し、
 ソファの背もたれに身体を横たえた。
 
 何かを考えようとしたが、気持ちが整理できなかった。
 そこで、私はそばにあった手にとって新聞を眺めた。
 
 すると、そこに偶然最新のガン治療の記事が出ていた。
 
 それは「アポトーシス」と呼ばれる最新の治療法だった。
 アポトーシスとは「自殺細胞」のこと。
 これまでのガン治療はガン細胞を力ずくで殺してしまおうとする
 療法が主流である。
 
 だが、なかなかうまく行っていない。
 
 そこで、ガン細胞にアポトーシスのP53遺伝子を
 直接ガン細胞に打ち込んで自殺に追い込もうというのだ。
 
 現在は局部的な治療にこの方法が用いられているだけだが、
 将来は有力なガン治療法になると、その記事は結んでいた。
 
 ところで、私がアポトーシスのことを知ったのは、
 ある雑誌で「自殺」に関する取材をした時だった。
 その時に精神科医に聞いた話は今でもよく覚えている。
 
 「人間の指はどうしてできるか知ってますか?
 指は生えてくるんじゃないんです。手には最初指はありません。
 周りの細胞が死滅して指になるんです。
 これをアポトーシスと言います。
 つまり、人間は誕生する前から自殺の遺伝子を持っているんです」
 
 生命体にはあらかじめ死の遺伝子がプログラミングされている。
 だから自殺というのは特別なことではない。
 精神科医はそう言ったのだ。
 
 私はYのことを想う。
 彼は今病室で何を考えているのだろうか。
 
 そういえば、Yはレッドツェッペリンのジミー・ペイジが
 大好きだった。
 そして、『天国への階段』のギターがお気に入りだったな。
 
 なんだかできすぎた話だな。
 
 私はそんなことを思いながら、iPodを取り出し、
 その中に入れていた『天国への階段』を再生した。
 
 じつにいい曲である。
 
 Yには会いたくない……
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